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2014年07月01日

●のりたまハウスと高橋堅氏の建築

「のりたまハウス」が「新建築 住宅特集」7月号に掲載された。
この家の写真や実物を見た人は決まって「墓かトーチカのようだ」という感想を口にする。
それはもちろん間違ってはいない。
まもなく初老を迎える夫婦とその母親の住む家なのだから、どのみち死の匂いから逃れられないからだ。
雑誌の表紙となった吹き抜けの空間を初めて模型で示されたとき「私はここで死ぬだろう」と建築家に言った。
それはなかば真剣な戯言だった。
この写真の視線は横臥して上空を見上げている。
死につつある者の眼差し。
それが捉えているのは仮想的な生と死のあわいの曖昧な時空だ。
建築家が現象的な空間の通底性について語っているのは、私にとってはそういうことだ。

最近のリテラルに透明な、ほとんど露出症的な住宅にはいつもうんざりさせられる。
それはこれ見よがしに開放的なようでいて、じつは外界に対する攻撃性の発露なのだ。
高橋堅氏の建築空間はそれとは正反対のものだ。
かれの建築はしばしば内省的な光の住宅といわれる。
しかしそれは決して自閉的なのではない。それはこの家を外界に対して閉じているという意味で「トーチカ」という比喩をあてるなら、それは間違っている。
生をどのように外に向けて開いたらいいのか、人はもっと考えるべきなのだ。

たぶんこの家はいくぶんか時代にそぐわないものなのだろう。
それでも構わない、と個人的には思う。
ただ、ほとんど流行を後追いすることしかできない連中の、この優れた建築家への無感覚が私を苛立たせる。