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2010年06月24日

●決戦12時間前

なので、なんだか仕事が手につかないのだ。仕方がないので、珍しく真面目なサッカー試論を書いてみる。

98年フランスWCの半年前、岡田監督はそれまでの4バックから3バック(実質5バック)へのシステム変更を決断した。
01年フランスとの親善試合での大敗後、トルシエ監督はバックラインを深めにシステムを修正し、1年半後の日韓WCに向けて守備と攻撃を立て直した。
06年ドイツWCの直前、ドイツとの親善試合で善戦したジーコ監督はそのままの体制でWC本戦に突入し、オーストラリア戦で玉砕した。

こうしてみると、代表のチーム作りには一定のパターンが存在することがわかる。日本代表はつねに当初はプレーヤーの実力をやや超過した攻撃的なシステムを採用しながら、それに失敗した瞬間に手のひらを返したように守備的な戦い方に戻るのである。
おそらくトルシエがその中で最終的にもっとも攻守のバランスのとれたチームを構築し得たのだが、それはWC本戦まで時間的余裕があった(ありすぎた?)という面が大きいかったのもしれない。

そして今回、本番直前に韓国に2連敗して守備的なシステムに鞍替えした岡田監督もまた、やっぱりこの轍を踏んだだけ、と考えることもできるだろう。
その意味で岡田監督は指導者として傑出した才能はなくても、プレーヤーの現状を的確に反映させた「戦える」チームづくりが短期間でできる優秀なコーチ、という評価がもっとも正当なのかもしれない。

しかし、こうした代表の強化「失敗」の連続は、ファンに別の見方を示唆しているのかもしれない。日本代表にもっともあった戦い方とは、今のような守備的なスタイルかもしれない、ということである。
現代表の戦術的な適応能力の高さは間違いなくJリーグ17年の歴史がもたらした成果であり、結局代表の強化にはリーグ強化がいちばんの早道、という結論は、それはそれで正しいとも思うのだが、しかしアーセナルのファンとして個人的に恐れるのは、おそらく今回、デンマークに勝利することで、このスタイルが本格的にJリーグでも定着、認知されてしまうかもしれない、ということだ。

あるいはむしろ鹿島のリーグ3連覇はこの事態をすでに予感させるものだったのかもしれない。
鹿島のプレーヤーが(控えの岩政を除いて)存在しない現代表は、要するに鹿島に勝てなかったJリーグのプレーヤーが主体となって鹿島以上に攻撃的なチームを作ろうとしてきたのであり、その発想自体がそもそも無理筋なのである。
(ちなみにオシムはそれが無理筋であることを十分意識していたし、無理筋を現実化させる指導力をたしかに持っていた。「考えて走る」ことの強調はつねに「相手よりも」という意味なのである)
もちろん岡田監督はオシムではまったくなく、それを無理筋とすら意識していなかったのかもしれない(特に岡田ジャパン初期の「接近」をテーマとした攻撃スタイル)。
だからこそこの期に及んでそのシステム的な矛盾を取り繕うために本田の1トップというバクチ(個人能力への依存)が必要となったわけだが、このバクチを成功と呼ぶべきか、いささか疑問が残る。
つまりこのチームは正確には守備的ではなく、単に行き当たりばったりの強化策の結果なのである。
しかし行き当たりばったりの果ての結論がつねに「こう」だとしたら、それは現実として受け入れなくてはならない。
デンマークに勝ってベスト16、という結果はもちろんサイコーに喜ばしいことだけど、もしかしたら逆にそれが今後の代表強化の方向性になりかねない、という危惧がイマイチ岡田ジャパンに乗り切れない理由なのである。

今後、Jリーグで鹿島を圧倒的なアタックで葬り去る(かつての磐田のような)攻撃的なチームは登場するのかどうか。
もしくはその鹿島じしんが「アジアのインテル」のような地位を確立することはできるのか。
いずれの方向性で上を目指すにしても、Jリーグ自体のドラスティックな改革が不可避なのは明らかであり、それはそれでこれまでの行き当たりばったりな代表強化よりももっとずっと困難な課題となる。
というか、バルサでもインテルでも強くなるなら正直どっちでも構わないけど、ただ行き当たりばったりの強化は今日を最後にしてほしい、と切に願う。
デンマーク戦の勝敗はそうした日本サッカーの行く末の分水嶺となるのかもしれない。

(06.28追記)
上記にて代表メンバーに内田篤人選手がいたことを失念していました。大変失礼しました>内田選手のファン&アントラーズサポの皆さま

ちなみにアントラーズではありませんが、浦和のフィンケの苦闘も結局上記の流れとかかわりがあるのかもしれない、とちょっと思ってみたりします。結局、ポンテ&ワシントンで点をとって他は守り倒す、というスタイルが日本人のサッカーには向いている、のかも。